学生時代の仲が良い友人の話です。彼女はなんでも鍵がついたモチーフのアイテムが大好きで、持っているバッグも鍵がついたデザインやメイクポーチまで鍵付き。彼女自身も「鍵がデザインされているものが好きだし、バッグやポーチなど持ち歩くものを全て鍵をかけるのも他人から開けられたりすることがないから、なんとなく中身を守っているような気がして安心できるの。だから家でも部屋机の引き出しも鍵付きだし、洋服ダンスやドレッサーの引き出しも鍵付き。外出するときはいつも部屋の中の細々した引き出しや箱にもなんでも鍵をかけるのが好き。だって、外出の間に、全てに鍵をかけておけば、家族に見られたくないものをいろんなとこにしまっておくと、だまって見られなくてすむから。」と鍵付きアイテムに対しての愛を私に力説をしてくれるんです。「すごいね。徹底した鍵付きマニアだね」と私が感心していると、彼女は私に認められたのが嬉しかったのか、なにやらバッグの仲をごそごそと取り出して、鍵が沢山ついたキーチェーンを見せてくれたんです。そのキーチェーンにはパッと見る限りでも7〜8個のなにやら鍵の形のものがじゃらじゃらとぶら下っていました。それだけじゃありません。さらに彼女は皮製の折り畳みタイプのキーケースにも8個ほどの鍵セットを私に魅せてくれました。彼女は、いつも鍵のセットを2セットに分けて、これぐらいの鍵をバッグに入れて持ち歩くの。で、これは自宅の鍵と部屋の鍵、またポーチやバッグの鍵それから、自室にあるいろんな箱や小物入れの鍵など、といちいち個々の鍵の仕様を説明してくれていたのですが、まさか自分が持っている全ての鍵を持ち歩いているの?と聞くと、イヤ全部じゃないよ。ほかにもいっぱいあるけど、メインで使っている鍵だけ持ち歩くようにしている。という始末。私は心の中で、どれだけ鍵持ってるんだろう。とちょっと彼女の鍵への偏愛ぶりをなかば感心したりあきれたりしていましたが、でも、別に鍵を沢山持っているからといって、彼女がそれで安心できるなら、いいんじゃない。と彼女の鍵への愛への理解者として納得していました。ところが。彼女の鍵への愛を聞いてから数日後のことです、彼女から、大変なことになったと電話があったんです。いつも持ち歩いている鍵セットを紛失してしまって、家には入れたても、自室の部屋も入れないし、洋服ダンスにも鍵がかかって外出するために着替えられない。困っている。家中探しても、出てこないと、どうしたらいい。と涙声で私に電話口で混乱しているんです。私は、家の人に相談して、鍵を開ける方法を考えてもらったら?と助言をすると、それがダメなの、鍵付きアイテムは全て私の趣味で、通販や雑貨店で買ったりしたから予備の鍵はないし、共通の鍵はないの。さらに自室の鍵も私が勝手に取り付けた南京錠タイプなの。そこまで、聞いて、もうこれは、どうしようもないと感じた私は、鍵を壊したら?と助言しました。彼女は、私と話をすることで、冷静さを取り戻し、やってみると、まずは自室の鍵を壊すことにしました。しかし、鍵箇所を壊すことはやはり難しく仕方なく、自室の扉ごとを外すということに。そこから、洋服ダンスの鍵を家の人のチカラをかりて、電動のこぎりなどで壊してもらって、無事に中身をとり出すことができたのだそう。でそのあとは細々した鍵付きアイテムもおなじ容量で無事に開錠。しかし彼女は大切にしていた鍵付きアイテムを自分のミスとはいえ、一気に壊さなければならなくなったことに大変ショックを受けていました。そこから、今度から鍵はあまり持ち歩かないことに決めたんだそうです。今はメインの家の鍵と新たに購入した金庫の鍵、持ち歩くバッグの鍵とポーチの鍵だけで、鍵を携帯するのを我慢しているだそうです。でもまだ鍵への執着はなくならず、新たに購入した鍵付きアイテムの鍵は全て自室内の鍵付き金庫に保管していると言っていました。でもまたその金庫の鍵をなくしたらどうなることだろう。とちょっと彼女が鍵紛失事件を起こさない様に祈るばかりの私です。